王子様とハナコさんと鼓星
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翌朝、目覚ましの音で目が覚め着替えてからリビングに行けば既に凛太朗さんの姿があった。
またやってしまった。と、思ったもの、お礼を言って隣に並び手伝う。朝食を向かいあって食べ、食後にテレビを見ながらコーヒーを飲んでいるとスーツに着替えた凛太朗さんが部屋から出て来る。
「華子。俺は予定があるからもう行くね」
「あ、はい」
コートを手にリビングを出る凛太朗さんの背中を追いかける。
「針谷が来るまで部屋にいる事。間違っても外で待ってる事はないように。帰りも部屋の中まで送るように言うから」
「わかりました」
スリッパを脱ぎ靴を履く。そして、荷物を足下に置くと「はい」と言いながら両手を広げられた。
昨日と同じように胸がドキドキして、同時にぎゅうと身体の中が締め付けられる。
引き寄せられるようにその逞しい身体に寄り添うと、伸びて来た手が後頭部に回り上下に数回撫でるように動かす。