王子様とハナコさんと鼓星
「大変ですね。まだ数日ですけど…1番はスキンシップがキャパオーバーです」
「え…はい?」
「え?あ、いや…えっと、ごめんなさい」
(私、何を言っているの。本音がつい出ちゃった)
口元を塞ぐと針谷さんは何かを察したのか「なるほど」と返された。
「社長は女性との距離が近いですからね」
「は、はい。あ、でも…そこだけ慣れないだけで、優しいですよ。なんでも褒めてくれて、怒らなくて、話も聞いてくれて色々話してくれます。あと、家事も手伝ってくれます。旦那様として完璧過ぎです」
「社長は掃除以外なら、昔からなんでも完璧です」
「確か、お二人は同じ大学なんですよね?凛太朗さんは…どんな方でしたか?」
カートを押して並びながら歩く。
「成績は常に1番でしたね。運動神経も良くて、色んなサークルから誘われていましたよ。ですが、それを全て断り宇宙に関わるサークルに入っていましたね」
「そうなんですね。前に宇宙飛行士が夢だったって言っていました」
「社長はそんな事も話していたんですね。では、諦めた理由は?」
「色々あって、諦めたって。それ以上は何も」
欲しかった物を通り過ぎてしまい、数歩下がってそれを取りまたカートに入れた。