王子様とハナコさんと鼓星


「大変ですね。まだ数日ですけど…1番はスキンシップがキャパオーバーです」

「え…はい?」

「え?あ、いや…えっと、ごめんなさい」


(私、何を言っているの。本音がつい出ちゃった)

口元を塞ぐと針谷さんは何かを察したのか「なるほど」と返された。


「社長は女性との距離が近いですからね」


「は、はい。あ、でも…そこだけ慣れないだけで、優しいですよ。なんでも褒めてくれて、怒らなくて、話も聞いてくれて色々話してくれます。あと、家事も手伝ってくれます。旦那様として完璧過ぎです」


「社長は掃除以外なら、昔からなんでも完璧です」

「確か、お二人は同じ大学なんですよね?凛太朗さんは…どんな方でしたか?」


カートを押して並びながら歩く。

「成績は常に1番でしたね。運動神経も良くて、色んなサークルから誘われていましたよ。ですが、それを全て断り宇宙に関わるサークルに入っていましたね」


「そうなんですね。前に宇宙飛行士が夢だったって言っていました」

「社長はそんな事も話していたんですね。では、諦めた理由は?」


「色々あって、諦めたって。それ以上は何も」

欲しかった物を通り過ぎてしまい、数歩下がってそれを取りまたカートに入れた。
< 197 / 325 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop