王子様とハナコさんと鼓星

***

「退勤前に呼び出してすみません」

「いえ。寧ろ急に休みをもらってご迷惑をお掛けしました」


午後の業務が終わると、主任から総務部に休暇届けを提出して欲しいと言われ、指定の用紙に記入してから総務部まで足を運んだ。


「いえ。怪我の具合はどうですか?」

「はい。痛みはもうありません」

「良かったです。でも、無理はしないでくださいね」

40歳くらいの綺麗な事務員でふわふわとした雰囲気の穏やかな女性。ニコリと笑顔を向けられつい私も笑顔になる。


「ありがとうございます。では、よろしくお願いします」

「はい。気をつけて帰ってね」


総務部を後にして、エレベーターに向かう。ポケットからスマホを取り出し針谷さんに「仕事が終わりました」とメールをすると「10分後に行きます」と直ぐに返信が来た。


チラリと社長室に繋がるレセプションには針谷さんの姿はない。本当は休暇届けを出したら直接針谷さんの所に顔を出そうと思っていたもの、いなかった為メールを送った。
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