王子様とハナコさんと鼓星
なんだろう。なんで、そんなに見つめるの?
「えっと、なにか?」
「あんまりこう言う事は言いたくないんだけど、チェックアウトが終わった時間だとしてもお客様が通る通路で男とベタベタするのは感心出来ないかな」
「…え」
言っている意味が分からなかった。どう言う事ですか?そう聞き返す。顔から笑顔を消し、洗面台に寄り掛かり彼は腕を組む。
「朝、バーテンダーの子と随分と親しそうだったよ。本当は今じゃなくて朝一番に会いに行ったけど、2人がいい雰囲気だったから声を掛けるのはやめた」
(それって、一ノ瀬くんの事だよね。2人でいた所を見られていたんだ)
「ご、ごめんなさい。イチャイチャするつもりではなくて」
「つもりはなくても、お客様に見られたらどうするの?印象よくないよね」
「は、はい。ごめんなさい」
「バーテンダーの子の事が好きなの?」
「え…えっ?」
何を言っているの?両手と顔を物凄い速さで振り、凛太朗さんに近付く。