王子様とハナコさんと鼓星
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「うっわ…なにそれ、超素敵なんだけど」
その日の夕方、帰り時間が桜と重なり一緒に裏玄関で針谷さんが迎えに来てくれるのを待つ。
最近桜とは恋バナばかり。今もまた、お昼に凛太朗さんと起きた出来事を話していた。
大体の一連の話しを聞き、桜はトロンと目を潤ませる。
「やっぱり、社長は王子様だよ。そんなキスをするなんて。しかも、本来ならもっと熱いキスに変わる所を…たった一回、ちゅってやっただけだなんて。聞いた私が蕩けそう」
「うん。それが逆に恥ずかしくて…」
お昼にトイレで初めて彼とキスをした。触れるだけの子供のようなキスを一回だけ。
唇を離した後は、身体を離して「もう戻らないと」と言い余韻に浸る間もないまま去っていった。それから、私の頭の中は凛太朗さんの事でいっぱい。
「言ったでしょ?何もしなくても社長から何か仕掛けてくるって。そっか、両思いか。これは、今日の夜は…楽しみではないですか」
肩に手を回し、ニコニコと悪い顔で笑う。
「それはないよ。てか、今日…家で顔をあわせにくい」
キスをした後だし、どんな顔をして会えばいいんだろう。平常心が一番だと思うけど私に出来るかな。