王子様とハナコさんと鼓星
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「それはまた、急ですね」
「うん。ごめんね」
その日の夜、21時頃に凛太朗さんは帰って来た。態度は至って普通、私も冷静な態度でご飯を温め直してからテーブルに並べる。
先に食べてお風呂に入った私は、ご飯を食べる彼を目の前に少し寂しい気持ちになっていた。
実は来月の初めにヨーロッパの方に出張があると言っていた話が予定より3日早く行く事になった。帰国の予定は変わらず10日間も日本にはいないという事。そして、日本を離れるのは5日後。
仕事だから仕方がない事なのに、何故か心にぽっかりと穴が空いた気分。
「今回は針谷も同行することになるから、その間の送迎だけど…」
「私ならもう大丈夫ですよ。あれから何もないですから」
「犯人はまだ捕まってないからそれはダメ。父親の秘書に俺達がいない間は送迎を頼んでおくからね。あと、色々と心配だから3日に1回は
寧々さんに様子見に来させるから」
「は、はい。わかりました」
そんなに心配しなくてもいいのに。まぁ、でも…何かあってからでは遅いもんね。