王子様とハナコさんと鼓星
「華子、一緒に寝ようか」
片手を私に向かって伸ばす。その手を思わずジッと見つめた後に、顔を上げて凛太朗さんを見た。
「え…は、へっ?」
間抜けな声が無意識に出る。口元を塞ぎ一度だけそらした視線をもう一度向ける。すると、満面の笑みで伸ばした手を肩に回し抱きしめられた。
久しぶりの抱擁。ううん、こんなふうに近付いた事が久しぶり。暖かい体温、凛太朗さんの落ち着く香りと胸の音。
あの日、キスをしてからずっとこうして抱きしめて欲しかった。やっと、やっと抱き締めてくれた事が嬉しい。
少しの隙間を埋めるように身体を押し付け背中に回した手で服を掴む。
「華子、苦しいよ。下着着てないでしょ?胸が当たって…恥ずかしいんだけど」
「あ…ご、ごめんなさい」
今日はお風呂が遅かったからもう下着は着ていなかった。当てるつもりはなかったけど、もっと強く触れたかったから。