王子様とハナコさんと鼓星
「ここのご飯久しぶりだね。華子が入社して来たばかりの頃に一度食べに来た以来かな?」
「そうだね。半年ですね」
「もう半年か。いただきまーす。ところで、社長がいない日々はどうですか?」
割り箸を割り、桜は注文したうどんを頬張る。
「いきなりその話題?まぁ…寂しいよね。でも、昨日の夜に電話を掛けて来てくれたよ」
「あらあら、愛されてますね〜。社長、向こうでは結構ハードなスケジュールなんだって。去年ウチのシェフが向こうのパティシエと新メニュー開発をする為に同行していた時、ほとんど宿泊先のホテルに帰って来なかったみたいよ。秘書の針谷さんも同じで、帰りの飛行機では大爆睡しているみたい」
「そうなんだ。確かに、忙しいような事は言っていたかも」
それなのに電話をしてくれたのね。申し訳ないけど嬉しいって思う。
「あ、そう言えば…今思い出したけど、新しい主任はどう?」
「いい人だよ。明るくて、賑やかな人って感じ。今度からミーティングでその日によって変える制度はやめて、1ヶ月交代で客室とトイレをローテーションするみたい」
「ふ〜ん、なんか物凄く腕がいい人みたいよ。良かったね」
「うん。なんて、あと何ヶ月もしないで退職だけどね」