王子様とハナコさんと鼓星
もう、ダメだ。
座ったままどさっと玄関に横たわる。ひんやりと身体に触れる床の感触。氷のように冷たくて、私の目から流れる涙が床を濡らした時だった。
「…あっ」
何かが背中に触れた。生暖かい感触。誰かに触れられているような気持ちになり、振り返るとそこにはゲンマの姿。
「ゲンマ?」
背中に擦り寄り名前を呼ぶと一瞬だけ振り向いてから身体を擦り付けてくる。
動物って不思議。今まで、こんな風にすり寄って来た事なんてない。いつも遠くで私を監視するように見つめているだけ。
それなのに、こんな私を心配してくれているのかな?そっと手を伸ばすとゲンマはそれを受け入れる。初めて触った感触は不思議で、なによりも、その暖かさにまた涙がこぼれた。