王子様とハナコさんと鼓星
『華子に懐いたのかな?』
「だと、嬉しいですね」
『きっとそうだよ。あ、そうだ…今日は針谷がね…』
「はい…」
凛太朗さんの声はとても落ち着く。この声を聞いていると、私は不安ではなくなる。
昨日から聡くんの事がふとした時に脳裏に浮かんで来る。今日も、朝から何回も思い出した。
心は乱れ、苦しいのに…凛太朗さんの声を聞いている時は不思議と穏やか。
だからつい、その声に聞き入っていると相槌を返さない事を不思議に思ったのか『聞いてる?』と言われ我に返る。
「ご、ごめんなさい。えっと、なんの話をしていましたか?」
『もしかして、具合とか悪かった?二日酔いとか』
「違いますよ。ただ…凛太朗さんの声質って落ち着くな…って。穏やかで、優しい声です」
『ははっ、なにそれ。聞き入ってたの?寂しくて?』
「はい…つい」
『え…そこは素直になるんだ。可愛すぎなんだけど』
ボソリと最後に言われた台詞はよく聞き取れない。
『そうだ。華子、俺の部屋で寝てもいいよ』
「なんですか、また突然そんな事を」
『いいから。いま、試しに部屋に入って、寝具に横になって』
なんだか、いやらしい言い方だった。そんなつもりはないとは思うけど、なんか…いやらしい。