王子様とハナコさんと鼓星

「じゃあ、入りますよ」

色めかしい誘惑に誘われるように凛太朗さんの部屋に入る。柔らかい寝具に横になるとゲンマも付いて来た。

『どう?』

「どうって…柔らかくて、凛太朗さんの匂いがします」

この匂いも落ち着く。香水と洗剤の香りと彼自身の香り。

『俺に抱きしめられている感じがしない?』

「….ん」

確かにするかも。気持ちいい。だけど…なんか身体がムズムズと痒いような気分。

「あの、これも良いです。でも、なんか変な気分になって来ます…って」


ガバッと寝具から起き上がる。目の前にいないのに、勢いよく手を振る。

口から無意識に出た言葉の意味。凛太朗さんが分からないわけがない。

「あの、その…」

『ははっ、変な気分って…何考えてるの』

「あっ…ちがっ…うっ」

そこは、黙っていてくれてもいいのに。こういう時は意地悪なんだから。


『ごめんごめん。と、言うか…可愛すぎ。これ以上声を聞いていたら今すぐに帰りたくなるから、電話切るよ。その、さっきのような意味じゃなくて別に寝てもいいから。華子の部屋の寝具より広いし。じゃあ、また』


はい。と、返事を返すと電話は切れた。胸がドキドキしている。顔も熱い。困った。もう、明日にでも凛太朗さんに会いたい。


そう思わずにはいられなくて、さらに寂しくなってしまった。
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