王子様とハナコさんと鼓星
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「それで、逃げて来た…と」
「は、はい。ごめんなさい…」
1時間ほど前、私が電話を掛けたのは桜だった。タイミングよく仕事終わりだった為、マンションまで迎えに来てもらい以前住んでいた寮で聡くんの事を話す。
本当は寮生以外は入ってはいけない。だから、寮母さんの目を盗み部屋に入ったが、明日まで出る事は出来ない。
それを覚悟でここまで避難して来た。
「それで、社長には何て言って出て来たの?」
「まだ飛行機の中だと思ったからメールで友達が風邪を引いたから看病に行くって…たぶん、折り返し電話とか来ると思って…スマホは家に置いて来た」
「私を病人にしたわね」
「ご、ごめん。顔見ると泣くと思って…怖くて…落ち着きたかったの」
「まぁ、気持ちは分からない事はないよ。でも…悪いけど今回ばかりは私は華子にアドバイスはしないから。自分で考えさない」
テーブルに置いたお茶を飲み、そう言われてしまう。冷たい言い方に彼女の顔色を伺う。
「と、言うか…聡くんに会ってもらった時に彼と何が起きたのか何で言わなかったの?その怪我の事とかも話してないとかさ…驚きだよ。もう話したと思ってたのに」
「なんか、タイミング逃して。聡くんとまた会うとか思わなかったから。こんな事になることも」
「それって、言い訳でしょ?言うべきだったんじゃないの?」
「はい…」
アドバイスなんてしない。なんて言いながらも桜は私の話を聞いて、正しい事を言ってくれる。
本当だよね。こんな事になるなら、あの時話していれば良かった。話していれば、こんなにも話しにくいとか、思わなかったのに。