王子様とハナコさんと鼓星
その日、お昼休憩を挟みながら時間内にトイレ掃除を終わらせた。
午後の仕事も、在庫の確認も全て終わらせると急いで着替え最寄りの電車に乗った。
一度乗り換えて20分ほど。駅を出てバスに乗る。
今朝、志田さんに系列ホテルに洗剤を取りに行けと言われ、そのホテルに向かっていた。
ホテルの最寄りの駅から直行便が朝と夕方から夜に掛けて何本か出ている。バスは10分ほどでホテルの前に着くとそのまま裏口に向かう。
業者が出入りする入り口のインターホンを押せば警備服を着た男性が顔を出す。事情を説明すると、話を聞いていたのか洗剤を1ケース持って来てくれた。
「それ…1人で持って帰れるのかい?」
2リットルの洗剤が4本。大きめの鞄2つに詰め込む私に男性は怪訝な顔付きで見下ろしている。
「持って行けると思ったんですけど…重いですね」
鞄を両手で持つもの、物凄く重い。手に食い込むほどで、思わずその場に置いて手の平をみると真っ白。
「いや、それは無理だよ…と、言うか…いつもは社用車か2人で来るのになんで今回は1人なんだい?」
「それは…その、色々ありまして」
「あ、もしかして、志田さんからの嫌がらせかい?知ってるよ、もともとここに居たからね、彼女。そっちで随分な事をしているって噂は聞いているよ」
「い、いえ…はは」
否定も肯定も出来ない。苦笑いを浮かべて荷物を肩に掛けた。
「あの、なんとか休みながら持って行きます。ありがとうございました」
「そうかい?いや、でも…困ったな」