王子様とハナコさんと鼓星


「あと1時間ほど待っててくれれば、送っていくよ。流石に若い女の子にその荷物を持って行かせるのは気が引けるからさ」


「ありがとうございます。でも、1時間で戻るように言われていますので」


ホテルを出る際、志田さん呼び止められ1時間で必ず帰って来いと念をおされている。だから、嬉しい提案だけど1時間は待てない。


それに、送って貰ったなんて知られたら大激怒されてしまう。


「すみません、お気遣いありがとうございます」

「そうか。じゃあ、気を付けてね」


ぺこりと頭を下げ、裏口を出ようとすると警備員の背後にあるバックヤードに繋がるドアが開いた。なんとなく2人で振り返ると、そこにいた人と目が合う。


「あ、社長…?」

「あれ、村瀬さんだ」

私の姿を見つけると、ゆったりとした足取りで近づいて来る。その少し後ろには針谷さんの姿もある。


「どうしたの?こんなところで」

「お疲れ様です。えっと…備品が足りなくなりまして…こちらに借りに来ました」


肩にかけられたら荷物をみつめ「へー」と気の抜けた返事。

まさか、ここで社長と会うなんて。今朝も会ったばかり。今日はよく会う。
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