王子様とハナコさんと鼓星


「その重そうな備品を1人で取りに来たの?」

「はい。あ、でも…こう見えて力ありますよ!」

全然平気です!そう続けて言うと、それを見ていた警備員が社長の方に体を向けた。


「凛太朗くん、自分のホテルに戻るのかい?」

「はい。会長に書類を渡しに来ただけなので」


「なら、この子も乗せて行ってくれないかな?重そうで可哀想でさ、実は困っていたんだ。顔見知りみたいだし、いいだろう?」


「はい。もちろんいいですよ。村瀬さん、荷物貸して」

「えっ?!」

返事を返す間も無く肩に掛けた荷物を2つ奪わらる。軽々と持ち、背後にいる針谷さんを仰いだ。


「針谷、運転頼んだよ。車を出して来て」

「はい」

「え、ま、待って」

「タイミングが良かったね。じゃあ、私は警備室に戻るから、頼んだよ、凛太朗くん」


軽い口調でそう言うと、片手を振りながら去っていく。それを見送った社長は先に玄関に出た針谷さんを追うように歩き、慌てて私はその背中を追う。


「社長!荷物は私が持ちますから」

「いいよ。重いから。このくらい任せて」

「で、でも…」

「大丈夫だから。ね?」


なんてスマートなんだろう。当たり前のように荷物を持ってくれるなんて…本当に紳士なんだから。
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