王子様とハナコさんと鼓星



「はぁっ…なんかさ、ここは家から近いし時給も高いから良いけど…この雰囲気だと、私はもう無理かもしれない。村瀬さんもさ、いつまでも部署移動出来ないならこれから事を考えたほうがいいわよ。あの人が退社するまで、我慢なんて出来ないかも」


「そう、ですよね…」

「はぁっ…朝から気分最悪」


その後も志田さんは10分間怒鳴り続け、やっとの事でおさまったのは主任が来てからだった。

まるでお通夜のような重い雰囲気の中、ミーティングを終えると誰も一言も話さないでそれぞれの持ち場に向かった。







「はぁ?呆れを通り越して笑えてくるんだけど」

「本当だよね」


午前の作業が終わり、食堂に行くとそこには桜がいた。ほとんどお昼の時間に合わないため、休憩が重なる事は珍しい。


和食定食を頼み、向かい合い食べながら今朝と2日前の愚痴を言うと桜の可愛い目が細められ眉間にシワが寄った。


「って、言うか…なんで主任でも管理職でもない志田さんにわざわざ言わないといけないわけ?百歩譲って急な休みを言わないといけないとしても、それを怒鳴る立場じゃないと思うんだけど…」


「本当だよね。物凄く重い空気だったよ。息も出来ないほどに」


「あの人って、自分が1番じゃないと気にくわない人なのよ。だから、知らなかった事に怒っているのよ。普通の人なら「そうなんだ」で、終わる所なのに。私は知らなくて主任は知っているなんておかしいって」


食べている手を止めて、私の話しに怒りをあらわにする。その迫力に苦笑いを返す。


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