王子様とハナコさんと鼓星


「本当にくせ者だよね。なんであんな人を雇ったのかしら。自分が雰囲気悪くして辞める人が後を絶たないってわかってないし。華子、本当にあんな人と働いていられるなんて感心だよ」


「うん。まぁ…ほら、私はトイレ担当だからミーティングが終わると志田さんとは退勤時に会うくらいで殆ど顔を合わせないからさ、それが逆にいいのかも。1人仕事だし、気を使わなくていいからね。数が多くて大変だけど」


「そうなの?と、言うか…華子も華子だよ?なんで、在庫の件だって華子は悪くないのに…言われるがまま取りに行くなんてさ」


「いや、ほら…波風立てたくないから。私もあの時逆らっていたら今日みたいに怒鳴られたと思うと恐ろしいよ」


身体が別の意味で震える。出汁の効いたワカメの味噌汁を口に含む。すると、桜は箸を置いて水を飲んでから両手で頬杖をついた。



「そう言う問題ではないかとおもうわよ。まっ、それで…社長のいい車に乗せてもらったんだもんね。羨ましいぜ?」


また、桜の悪い顔。面白い事や私をからかう時に必ずこの悪い顔をする。目を細めて、口元を釣り上げる。声色も少し高い。


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