王子様とハナコさんと鼓星


「ありがとうございます」


この気持ちを上手く伝える事は出来ないけれど、精一杯の感謝を込めて言えば伸びて来た手が頭に触れた。


「いいえ。そうだ、横になるともっと綺麗だよ」

ゴロンとベンチに横になる。まるで子供のような行動に少し驚いた。

迷った末に私も横になる。お互い頭部を付き合わせ空を眺める。


「あ、あれはオリオン座ですね」

「詳しいね」

「オリオン座くらい分かりますよ。冬の大三角形とか北斗七星とかカシオペア座とか、そのくらいなら。星とかお好きなんですか?」

「好きだよ。昔、未確認飛行物体を見た事がある」

「ええっ!?う、嘘!」

クスクス笑いながら言われ思わず突っ込んだ。


「いや、正確にはUFOだと思い込んでいたけど、それがただの人工衛星だって気付いたのは小学5年だったな。それから、絶対に見つけてやるって心に決めて星とか宇宙とか沢山勉強した」


「そうなんですね。あ、だから、ホテルの名前が外国語で天の川なんですね」


「よく知ってるね。そうだよ。俺たちがいる天の川銀河。なかなか良い名前だと思ってる」


「良い名前です」

「ありがとう。本当は大人になったら空に関わる仕事がしたかったけど、それは無理だったから自分のホテルにその名前を付けたんだ」


「そう、なんですか」


なんかそれは意外。私は会社の社長として出会った。だから、社長が今の仕事ではない事がしたかったなんて。

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