王子様とハナコさんと鼓星
「空と言うと、パイロットとかですか?」
「いや、宇宙飛行士」
「わあっ、素敵!」
身体を起こして社長を見下ろす。予想外の言葉につい興奮して大きな声を出してしまう。
「そうかな?なんて、結局色々あって諦めたけどね。だから出来れば60歳くらいでこの仕事は引退。老後はハワイと田舎に別荘を建てて、奧さんと一緒に星の観測をするのが夢」
「そういうのも素敵ですね。社長と結婚出来る人が羨ましいです。だからと言って言うわけではないですけど…昔、父が景品で当てた望遠鏡で月をずっと見ていました。大人になって、仕事とかばかりで空を見上げる事が少なくなって来て…久しぶりにこうやって上を見たら…やっぱり、いいなって思います」
「そう。気があうね」
「はい。あの、連れて来てくれてありがとうございます」
またゴロンと寝転がる。
今度家に帰ったら望遠鏡を持って来ようかな。こんな空を見ていたら悩みなんて消えてしまいそう。
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