王子様とハナコさんと鼓星
「なんか、こう…胸に響く子がいないんだよね。確かにみんな美人で可愛い子が多いけど…それだけ。中身を知ると幻滅する事が多い」
「女の子みたいな事を言いますね」
「男も意外とそう言う事を思うよ」
「でも贅沢ですよ。皆んなそれぞれ欠点があるんですから」
「じゃあ、村瀬さんにもあるの?欠点が」
(わたしの…欠点か)
「沢山ありますよ。まずは身長が低いです」
「そうかな?それが可愛いと思うよ」
「え?で、では…料理が下手です」
「それは勉強だね。悪いところではないよ」
「な、なら…厳しくされるのは苦手です。仕事とかも…ホテルに来る前に3社を直ぐに辞めてます。厳しくされると悲しくて、皆んなで楽しく仕事をしたいって考えている甘々な人間です」
「そうかな?なにをモチベーションにして仕事するかなんて人によって違うよ。その3社は村瀬さんとは考えが違うだけ。無理に合わせて自分を偽るより、辞めて正解」
「あの…フォローしてほしいわけでは」
「この話をされるのは嫌かもしれないけど、清掃部さ、前に指導があったって事は支配人から聞いていたんだよね。それから音沙汰ないから落ち着いているかと思えば…あんな事をバックヤードで堂々と話していたのには驚いた。いつも、あんな感じなの?」
「…え」
ドクンと心臓が大きく動く。
本当の事を、私が思う事を言ってもいいのか迷った。
だって相手はこうして一緒にいるけど、一応社長。社会人として問われたとしても本音を話していいものか。
目の前の星なんて見えなくなるほど、内心動揺していた。ゴクリと息を呑み、両手をお腹の上で組む。
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