副社長と秘密の溺愛オフィス
「あの、周りをだましていることに、いたたまれなくなってしまって」

「俺たちが入れ替わっているってこと?」

 わたしはゆっくりと頭を振る。

「それは仕方のないことだから、そこに関してはわたしも諦めているんですが、婚約までする必要があったのかなって。お父様たちご家族の気持ちや本来あなたと結婚すべき人たちにとって、この嘘の婚約話がどれほど影響を及ぼすかと思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいです」

「そうか」

 わたしの言葉に短い返事があった。しかしそれは冷たい感じではなく、むしろ多くを語らず、わたしの気持ちをうけとめてくれているように感じた。

「本来なら、俺の結婚は俺のものだから、最終的には自分で決めた相手とするつもりだった。これは今までもこれまでも変わらない。だから君が気にするようなことじゃないんだ。そういっても真面目なきみのことだから、きっと罪悪感は持ち続けるのだろうけどな」

 彼の左手が伸びてきて、わたしの前髪をクシャッとまぜた。まるでなぐさめるようなその手に癒される。

「あ、そうだ。これ、どうだ?」

 そういって見せてきたのは、今日のために準備した婚約指輪だ。あらためて近くで見ると、その豪華さに目を瞠る。

中央の大きなダイアモンドを取り囲むように小さな石が埋められていてとてもきらびやかだアームの部分はとても細く華奢な作りになっている。ため息の漏れそうなほど豪華だ。
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