副社長と秘密の溺愛オフィス
「わかりました。最後に彼女と話をさせてください」

「……どうぞ」 

 渋々だったが納得したのか、足音が近づいてきて慌ててベッドに戻る。

――コンコンッ

「はい」

 ノックの音に返事をした。開いた扉の向こうからは悲壮感漂う明日香の姿があった。

 おいおい――ひどい顔だな。俺の顔なんだからもっと取り繕えよ。

 そうは思ったけれど扉を閉めた途端、ベッドに駆け寄ってきた。


「どうしよう……あの、えっと」

 混乱でうまく話を整理することができない彼女の背中をポンポンと叩いて落ち着かせる。

「話はだいたい予想がつく」

「じゃあどうして、助けてくれなかったんですか!?」

 まぁ彼女の言うこともごもっともだ。けれど、俺にも考えがある。明日香が追い出される前に聞いておかなければいけなことを聞く。

「ひとつだけ、あの黒田ってやつ何者だ?」

 そこだけは確認しておく必要がある。よもや「彼氏」などとは言わないだろうな。

「お隣に住む、幼馴染みです。わたしも翼も兄のように慕っています。両親がなくなってから、何かあったら助けてもらっていた家族同然の人です。だから失礼のないように――」

「わかった、わかった!」

〝家族同然〟と聞いてニンマリする。家族=恋愛感情がないということだ。にやついた顔を明日香にさとられないようにして、彼女に帰宅を促した。
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