副社長と秘密の溺愛オフィス
「あの、お呼びでしょうか?」

「あなたが、このここの責任者?」

 紘也さんが聞く前に、わたしが確認をする。

「はい。そうです。何か不手際でも?」

 わたしと責任者の間に紘也さんが入る。いきなり全面に出てきた秘書に面をくらっていたが、紘也さんはお構いなしに話を続けた。

「この部分、前回指摘したことが改善されていないように見受けられますが、いかがですか?」

 図面を覗き込んだ責任者が「それは……」と口を開いたときに、別の男性の声がかぶる。

「それはわたしの指示に従ってもらったんだ」

 背後から聞こえてきた声に振り向くと、そこには大乗専務の姿があった。

 近づいてくる専務を、紘也さんは思いっきりにらみつける。

「これは、以前のままのほうが効率がいい。よって改善しなくていいとわたしが指示を出したんだ」

 ニヤニヤと笑いながらわたしに向かって説明してきた。しかし紘也さんがすぐに反論する。

「勝手なことしないでください。俺――副社長の指示をどうして変えたんですか?」

 いきなり詰め寄ってきた秘書に、専務は一瞬たじろいだが相手は秘書だと、すぐに態度が大きくなる。

「いったい誰に口をきいてるんだ。これでうまくいっているんだから、面倒な手間をかける必要などないだろう?」
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