副社長と秘密の溺愛オフィス
「明日香、お前すごいな! あの専務の顔見たか?」

 お腹を抱えて笑う紘也さんの横で、わたしはへなへなと座り込みそうになった。

「お、おい。大丈夫か?」

 咄嗟に紘也さんに支えてもらう。

「は、はい。わたし、あんなに面ときって意見したことってなかったから……でも、今のわたしは副社長だから……あぁ、緊張した」

 わたしの能力は紘也さんには遠く及ばない。けれどだからといって、彼の代わりをしている間にできる限りのことはしたかった。だから彼が今の状況ならばどういう態度をとるか考えて行動したのだけれど――緊張した。

「立派だった。ありがとうな」

 彼に褒め荒れて誇らしい気持ちになる。

「ほら、立てるか?」

「はい」

 立ち上がって、現場を後にするときに足場が組まれた現場を見上げる。
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