副社長と秘密の溺愛オフィス
第五章

⑭わたしがわたしに戻るとき

 プレジデントデスクに座り、秘書の仕事をこなしているわたしに、紘也さんが明日の会議資料を差し出した。
「これ、大事なところに補足入れておいたから、確認しといて」

「はい。わかりました」

 内容については、下期の経営戦略についてだ。今日の会議みたいにしどろもどろになることがないように、紘也さんのアドバイスを元にして色々と頭にいれておかなければいけない。

 わたしはさっそく蛍光ペン片手に資料に集中した。


「俺、今日は秘書課のミーティングに顔出してから帰るから。お前も早めに家に戻れよ」

「わかりました」

 彼が部屋を出ていってからも、しばらく資料の読み込みをしていると、デスクの上の電話が鳴った。内線のランプが光る。

「はい。甲斐です」

『もしもし、大乗です。あの生意気な秘書は不在かい?』

 電話の相手を知り、手に力がはいる。今日反論したことで何か言われるのだろうか?

「はい。彼女は本日はもう戻りません。わたしがご用件をお伺いいたします」

『あぁ、今日言われたことなんだがね。早速気になることができたから、連絡したんだ』

 今日現場で話をしたことが、きちんと相手に伝わっていたようだ。
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