副社長と秘密の溺愛オフィス
 ニコニコと笑う紘也さんの顔は引きつったままだ。そしてその顔のまま幹也さんに詰め寄る。

「とにかく、無駄な話をせずに素敵なドレスを作ってくださいね」

「あ、はい」

 どす黒いオーラを放つ紘也さんに脅されて、幹也さんはおびえた表情でうなずいていた。

「さぁ、これからが本番よ! さぁ、幹也はさっさと戻ってドレス作りなさない。あぁ、忙しい」

 お母様は、立ち上がって玄関に向かう。

「あなたたちは何も心配しなくていいから。準備はわたしにまかせなさい」

「あの、でも――」

 本当にそのパーティとやらをしなくてはいけないのか? そう尋ねたかったけれど、「なに?」とうれしそうに振り向かれると、それ以上お母様に何も言うことができず、玄関から出ていくふたりを見送るとこしかできなかった。

「どうしよう……パーティなんて」

 玄関で呆然としてつぶやくわたしに、紘也さんは「まぁ、どうにかなるだろ」と能天気に返してきたのだった。
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