副社長と秘密の溺愛オフィス
「もしかして、惚れ直した?」

 も、もしかしてわたしの気持ちがバレてる? 

 そう思って一瞬あせったけれど、いたずらめいた顔をしている彼を見て、冗談だと悟った。

「何言ってるんですか。みかけはわたしなんですよ。わたしがわたしに惚れるはずないじゃないですか」

「まぁ、そうだな。でも今日の俺は最高にイケてると思わないか? やっぱりお前はもっと着飾るべきなんだよ。これで納得しただろう?」

「それとこれとは話が別です」

 日頃から紘也さんの選ぶような派手な服装はできない。やっぱり中身が伴わないと着こなせないものだから。

 あれこれとふたりで顔を寄せて話しをしていると、社長の隣に立って挨拶をしていたお母様が、わたしたちに気がついて、手招きをした。

「おい、呼ばれてるぞ」

「呼ばれてますね」

 すぐに社長も気が付きこちらに視線を向けた。表向きは誕生日のお祝いに駆けつけたことになっているのに、挨拶をしないわけにはいかない。

「とりあえず、打ち合わせどうりにやればいい。俺たちならできる」

 小さな声で勇気づけられてゆっくりとうなずき、一歩踏み出した。
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