副社長と秘密の溺愛オフィス
「親父誕生日おめでとう」
できるだけ冷静に声をかけた。わたしたちの異変に気が付かれないかどうか、いつもドキドキしてしまう。やはり家族は小さな変化に気が付く可能性が高いからだ。
わたしは記憶の中にある紘也さんをイメージして、本来の彼のように振舞うように最大限の努力をした。
「あぁ、紘也に、乾君――じゃなくて、もう明日香さんと呼んだほうがいいのかな?」
「どちらでも結構ですよ。では、わたしもお父様とお呼びしたほうがよろしいですか?」
紘也さんはお父様の言葉を返すようにして、首を傾げた。
そ、そんな大それたこと、わたし絶対言いませんからーー!!
わたしがこんなに努力しているのに、紘也さんはどこ吹く風。まったくやりたいようにやっている。こっちが緊張して頑張っているのが馬鹿らしくなった。
「おぉ! これは一本取られたな。かわいい娘に〝お父様〟なんて呼ばれると、鼻の下がのびてしまそうだよ」
ニコニコと満面の笑みを浮かべた社長――お父様は会社の経営者ではなく、今は父親としての喜びに満ちた顔をしていた。
「君みたいな、かわいくてしっかりものの子が嫁にきてくれてうれしいよ。紘也、これからは家庭を持つんだ。ますます仕事に精進しなさい」
「はい。わかりました」
ぼろがでないように、短く返事をしたわたしだったが、周囲の空気が一気に変わったのに気が付いた。
できるだけ冷静に声をかけた。わたしたちの異変に気が付かれないかどうか、いつもドキドキしてしまう。やはり家族は小さな変化に気が付く可能性が高いからだ。
わたしは記憶の中にある紘也さんをイメージして、本来の彼のように振舞うように最大限の努力をした。
「あぁ、紘也に、乾君――じゃなくて、もう明日香さんと呼んだほうがいいのかな?」
「どちらでも結構ですよ。では、わたしもお父様とお呼びしたほうがよろしいですか?」
紘也さんはお父様の言葉を返すようにして、首を傾げた。
そ、そんな大それたこと、わたし絶対言いませんからーー!!
わたしがこんなに努力しているのに、紘也さんはどこ吹く風。まったくやりたいようにやっている。こっちが緊張して頑張っているのが馬鹿らしくなった。
「おぉ! これは一本取られたな。かわいい娘に〝お父様〟なんて呼ばれると、鼻の下がのびてしまそうだよ」
ニコニコと満面の笑みを浮かべた社長――お父様は会社の経営者ではなく、今は父親としての喜びに満ちた顔をしていた。
「君みたいな、かわいくてしっかりものの子が嫁にきてくれてうれしいよ。紘也、これからは家庭を持つんだ。ますます仕事に精進しなさい」
「はい。わかりました」
ぼろがでないように、短く返事をしたわたしだったが、周囲の空気が一気に変わったのに気が付いた。