副社長と秘密の溺愛オフィス
「そうか、それならいいが」
「わたしが付いていますから、安心してください」
すかさず紘也さんが、わたしをかばう。
「そうだったな。それなら安心だ」
「では、失礼します」
ふたりで頭を下げて、その場を離れた。しかしそこからが正念場だった。会場にいる色々な人に声をかけられ、婚約の報告をする。そのなかには、あきらかに残念そうにする人が多くいた。年頃の女性はあたりまえだが、娘や血縁者を紘也さんと結婚させたがっていた親世代の人達の隠せない落胆を目の当たりにした。
紘也さんひとりの結婚がこんなにも周りに影響を与えるとは、今まで漠然と考えてはいたけれど、実際に当事者になるとここまでとは思いもよらなかった。
やっと周りにいた人の数が減ったところで、紘也さんに耳打ちされる。
「俺ちょっと、トイレ。スカートって、スースーするな」
「いってらっしゃい」
馴れないであろう、ヒールにスカートで紘也さんも苦労しているに違いない。わたしは彼がいない間にボロがでないように、壁と同化して過ごすことにした。
気配を消すすべは身に付けている――つもりだったけれど、この容姿と立場だ。まわりが放っておくわけもなく、次々に声をかけられる。
冷や汗をかきながらも、なんとか切り抜けた。彼の秘書だから、お客様の顔と名前を覚えていたのが功を奏した。
「わたしが付いていますから、安心してください」
すかさず紘也さんが、わたしをかばう。
「そうだったな。それなら安心だ」
「では、失礼します」
ふたりで頭を下げて、その場を離れた。しかしそこからが正念場だった。会場にいる色々な人に声をかけられ、婚約の報告をする。そのなかには、あきらかに残念そうにする人が多くいた。年頃の女性はあたりまえだが、娘や血縁者を紘也さんと結婚させたがっていた親世代の人達の隠せない落胆を目の当たりにした。
紘也さんひとりの結婚がこんなにも周りに影響を与えるとは、今まで漠然と考えてはいたけれど、実際に当事者になるとここまでとは思いもよらなかった。
やっと周りにいた人の数が減ったところで、紘也さんに耳打ちされる。
「俺ちょっと、トイレ。スカートって、スースーするな」
「いってらっしゃい」
馴れないであろう、ヒールにスカートで紘也さんも苦労しているに違いない。わたしは彼がいない間にボロがでないように、壁と同化して過ごすことにした。
気配を消すすべは身に付けている――つもりだったけれど、この容姿と立場だ。まわりが放っておくわけもなく、次々に声をかけられる。
冷や汗をかきながらも、なんとか切り抜けた。彼の秘書だから、お客様の顔と名前を覚えていたのが功を奏した。