クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
「恩人であるその彼女に、妹も両親も会いたがってるよ」

「……猫は、ちゃんと元気?」

「まずはそこ? 心配しなくても元気だよ。元野良だったなんて考えられないくらい、いいご身分で幸せに生きてるから、一度、会いに来てみれば?」

 もうおぼろげにしか思い出せないけれど、あのときの小さな子猫が今も元気に過ごしているのだと思うと心が温かくなった。

「それで、どうする? 妹や両親に会ってくれる?」

 意地悪く微笑まれ、私はわざとらしく聞き返した。

「それは、恩人として? それとも……」

「もちろん、俺の結婚相手として」

 断るなんて選択肢、きっと用意されていない。幹弥の両親や妹さんはどんな人なんだろう。あの猫に、少しはナイトの使っていたものを使ってもらえるかな? 

 私はこうして彼のものになっていいんだろうか。

「幹弥は全部、こうなることをわかってたの?」

 彼はいつもの余裕のある笑みを浮かべる。でも、嬉しそうで幸せそうだ。

「さぁ? でも正直、優姫がまだ江頭に未練があるって思ってた節もあったからなんとも言えないけど。ただ、確実に手に入れるつもりだった」

 それは十年前から? それとも再会してから?

 でもどちらにしても、もう手遅れ。私の体も心も、彼の毒に侵されている。逃げられないなら、離れられないなら、一生そばにいてもらわないと。彼にとって、私も毒なら、尚更。

「優姫、返事は?」

 どこか不安そうな幹弥に今度は私が笑って、答える代わりにキスをねだった。甘くて危険な口づけを。抜け出したかったけれど、今は逆にこの毒がこれからも回り続けることを願った。

 彼か、私か、あるいはどちらもか、こうして私たちはずっと唇に毒を塗ってキスを乞う。

Fin.
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