クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
楽しかった、気晴らしになった。なのに、それを必死に言い聞かせている自分が、空しくなる。昼間はまだ暖かかったのに、夜になると気温は急激に下がり、遠慮なく体温を奪っていこうとする。
さっさとタクシーを拾って帰った方がいい。風邪を引いても洒落にならないし。
けれど私はタクシーを拾うことなく、歩き始めた。家までは歩くにしては距離があるのもわかっている。でも、今は歩きたかった。動いていないと、なにかに押し潰されそうな感覚になるから。
そして、しばらく歩いたところでバスを待つためのベンチがあったので腰掛けた。一応、時刻表を確認すると、最終は行ってしまっていたようで、バスの運転手さんに迷惑をかけることはなさそうだ。
長く息を吐いて、ぼーっとする。アルコールのせいだろうか、平衡感覚がどこかおかしい。道行く車や人を焦点の定まらない瞳に映して、なにも考えないようにしていた。
「オネエサン、大丈夫?」
そんなとき、ふと声をかけられ、私はゆっくりと振り返った。右斜めうしろには、ベンチの背もたれに手をかけ、若い茶髪の男性がニヤニヤと笑みを浮かべながらこちらを見下ろしていた。
なかなか派手な髪型と革ジャンだな。私と同じくらいか、少し下か。学生では……ないか。
「気分悪いの? 家どこ? 送って行ってあげようか?」
早口に告げられたけど、私はなにも答えられなかった。彼の笑みはお世辞にもあまり素敵とは思えない。どこか下品な感じさえするけれど、指摘することもない。
「俺、あっちに車を置いてるからさ」
「お気遣いどうも。でも平気ですから」
静かな声で拒否したけれど、彼は笑ったままだった。
さっさとタクシーを拾って帰った方がいい。風邪を引いても洒落にならないし。
けれど私はタクシーを拾うことなく、歩き始めた。家までは歩くにしては距離があるのもわかっている。でも、今は歩きたかった。動いていないと、なにかに押し潰されそうな感覚になるから。
そして、しばらく歩いたところでバスを待つためのベンチがあったので腰掛けた。一応、時刻表を確認すると、最終は行ってしまっていたようで、バスの運転手さんに迷惑をかけることはなさそうだ。
長く息を吐いて、ぼーっとする。アルコールのせいだろうか、平衡感覚がどこかおかしい。道行く車や人を焦点の定まらない瞳に映して、なにも考えないようにしていた。
「オネエサン、大丈夫?」
そんなとき、ふと声をかけられ、私はゆっくりと振り返った。右斜めうしろには、ベンチの背もたれに手をかけ、若い茶髪の男性がニヤニヤと笑みを浮かべながらこちらを見下ろしていた。
なかなか派手な髪型と革ジャンだな。私と同じくらいか、少し下か。学生では……ないか。
「気分悪いの? 家どこ? 送って行ってあげようか?」
早口に告げられたけど、私はなにも答えられなかった。彼の笑みはお世辞にもあまり素敵とは思えない。どこか下品な感じさえするけれど、指摘することもない。
「俺、あっちに車を置いてるからさ」
「お気遣いどうも。でも平気ですから」
静かな声で拒否したけれど、彼は笑ったままだった。