クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
 宣言通り、彼の手が無駄なく焦らすように再び私に触れはじめ、弱いところをゆるゆると刺激される。追い詰められていく、そんな感覚。

 必死で声を抑えて、ぎゅっと目を瞑る。それでも目尻に溜まっていく涙は堪えられそうもない。胸が潰れそうに苦しい。

 なんで自分は泣いてるの? この状況が情けなくて? 自己嫌悪?

 答えが出せないままゆっくりと目を開くと、滲んだ視界に彼が映った。その顔ははっきりとは見えないけど、いつになく心配そうで、真剣で。

 おかげで私の心はさらに乱されて、惨めな気持ちが増幅する。留まることのできなかった涙が、重力に従って枕を濡らした。

 冷たいと感じる間もなく、彼の唇が目元に寄せられ、涙の跡をなぞるようにして舌が這わされる。そして彼は、私の首元に顔を埋めて、どこか切なそうに聞いてきた。

「そんなに俺に抱かれるのは嫌?」

 その質問に私は硬直し、答えることはできなかった。嫌だと言えば、彼を喜ばせるだけだ。嫌なのに、まんまと彼に抱かれている自分はただのピエロだ。

 でも嫌じゃない、なんて言ったら、なにを勘違いしているんだ、ともっと馬鹿にされるだけ。

 きっと、この行為が嫌だとか嫌じゃないとかいう問題じゃない。それ以前に私は彼のことが――

「嫌い、大っ嫌い」

 泣きそうな声できっぱりと言い放つと、彼は顔を上げて至近距離で私を見下ろしてきた。もう明かりがなくても、随分と目が慣れ、彼の表情はよく見える。
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