クールな御曹司の蜜愛ジェラシー
 一馬への想いが実ることはないと思っていたけれど、それでも今、こんな穏やかな気持ちでいるのが信じられない。いざふたりが付き合いだしたら、もっとショックを受けると思っていたのに。

「お前、ユウというものがありながら!」

 けれどからかい混じりで同じグループの男子から飛んだ声に、私は我に返った。なんとなく、ここで話題に出されるのは避けたかった。

「俺も罪な男だよな、ごめんな、ユウ。俺にとってお前は親友で、女として見たことは一度もないんだ」

 しかし、それに乗っかる一馬に、穏やかだった私の心は乱れ始める。

「ちょっと、なんで私が振られてる形になってんのよ」

 唇を震わせながら、周りの雰囲気もあって私は平静を装って返した。わかってる、これは、真紀に対する一馬なりの気遣いなのかもしれない。

 でも、そんなことを今、この場で言わなくても。少なくとも彼の前で――

「誰か、ユウでもいいって言う奴がいたらぜひ! 女らしさはありませんが、いい奴なんです」

 そこで笑いが起こる。駄目だ、こういうときは、私も冗談交じりに返さないと。それが私のキャラだ。ここで傷ついたような顔を見せたらいけない。

 けれど私は曖昧に笑ってやり過ごすしかできなかった。

 そんなとき、ふとみんなと同じように笑っている山下さんが視界に入る。それを見て、とてつもなく惨めな気持ちになる。

 一馬に言われなくたって、十分に自覚している。唇をぐっと噛みしめて視線を落とす。山下さんの隣にいる幹弥の表情までは、怖くてたしかめることはできなかった。
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