運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
コイツ何言ってんのよ、と言いたげに顔をしかめる蘭子さん。それならお望み通り、説明してあげましょうか。
「運命的政略結婚なんです」
「……なによそれ。ますます意味が分かんないんだけど」
「知らないんですか?」
しらじらしく首を傾げながら、心の中では悪魔よろしく黒い笑みを浮かべていた。
そりゃ知らないだろう。こんな変な言葉を生み出したのは、ほかでもない藍澤先生なんだから。
「政略結婚のために出会った私たちですが、お互い運命を感じてすぐに恋に落ちたということです。なので、浮気の心配もありません。彼は、私にベタ惚れですから」
……と、ここでも藍澤先生の言葉をちょっと拝借。
箱根の旅館で、女将に宣言していたもんね。ま、あの時は冗談だったと思うけど、彼の口から出た言葉には違いない。
「ほかに言いたいことがなければ、私はこれで。蘭子さんも、いいお相手が見つかるといいですね」
会場には「オジサンばっか」と嘆いていた彼女に皮肉の意味でそう言い、にっこり微笑んだ。
でも、本当は心臓がバクバクしていたので、言い返されるより先にくるりと踵を返して、足早にその場を離れた。