運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
しかし会場の扉を出て静かなロビーに着くと、スッキリしたどころか、やってしまった……と後悔した。
実は、私があんな風に人に言い返すのは、人生で初めてのこと。学生時代にもたまに悪口を言わた経験はあるけど、聞こえないふりをしたり笑ってごまかしたり、なるべく波風を立てないように生きてきたつもりだ。
なのに、なんでかな……蘭子さんの発言は、聞き流せなかったんだよね。今頃、お父さんと中谷先生が、気まずい空気になってたらどうしよう。
はあ、と肩を落としていると、少し遅れて父が会場から出てきた。私の姿を見つけホッとしたように微笑み、言葉を掛けてくれる。
「いやー、強烈なお嬢さんだったな。にしても、美琴があんな強気に言い返すとは、お父さんちょっとびっくりしたぞ」
「うっ……ごめん。中谷先生、怒ってなかった?」
「いや、むしろ謝っていたよ。娘が失礼なことを言って申し訳ないと」
「そっか……」
娘はともかく、中谷先生はいい人そうだったもんね。父と彼の関係に影響がないとわかって安心したけれど、落ち込んだ気持ちはなかなか浮上しない。