運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
「会場、戻りづらいな……」
「タクシーでも呼んで先に帰るか? 俺はさすがにまだ居ないといけないからな」
「うん……そうしよっかな」
すっかり意気消沈した私のために、父がすぐにタクシーの手配を済ませてくれた。そして彼だけ会場に戻る途中、扉の前で一度私の方を振り返った。
「それにしても、美琴はあまり結婚に乗り気じゃないと思っていたから、蘭子さんに食って掛かる姿を見て驚いた半面、安心したよ。あんな風に怒るのは、それだけ藍澤くんを想っている証拠だものな。上手くいっているなら、早く婚姻届けを出して、花嫁姿を見せてくれよ」
私が、藍澤先生を想っている……? あんなにも怒りが湧いたのは、そのせいってこと?
父の指摘にはた、と固まっている間に、彼は扉の向こうへと消えてしまった。
「なんか、もやもやする……」
ドレスの胸元をぎゅっとつかんで、ひとりごちる。
その原因は、さっきの蘭子さんとの喧嘩のせいじゃなくて……こんな時にそばにいない、あの悪魔さんのせいだ。
蘭子さんにはああ言ったけど、本当は自分が一番、藍澤先生との結婚を不安に思っているのだと、思い知らされた気がした。