運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~


「全然散らかってないじゃないですか」

「そ、そう?」


あえて言うなら、ベッドの上の布団が乱れているくらいで……ん? ベッドが乱れている? いや、考えすぎか……彼が仮眠を取ったのかも。

にしても、藍澤先生はなんだかソワソワして落ち着かない様子で、今も私と目を合わさずにクローゼットの方ばかり見ている。そこになにかあるの?と注意深くクローゼットを観察すると、ちょうど人一人隠れられそうなサイズであることが妙に引っかかった。

まさかとは思うけど、蘭子さんにひどい言われようだったからな……。いちおう、“シロ”だってことを、この目で確認しておこうか。


「立派なクローゼットですね。開けてもいいですか?」

「えっ。それはやめたほうがいいかなぁ……ほら、俺も三十過ぎてるし、中の服から加齢臭がするかも……」


……アヤシイ。女の勘とでも言うのだろうか。自分の中のセンサーが“ここを調べろ!”と強く主張している。


「藍澤先生は、加齢臭よりフェロモンの過剰分泌を気にした方がいいですよ。……では、ちょっと失礼しまーす」


私は彼の言葉を無視して、ひと思いにクローゼットの取っ手を引いた。


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