運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
そして目に飛び込んできたのは、予想だにしていなかった人物がクローゼットの中で身体を縮こめた姿。
え……? なんで、彼女がここに……?
「こ、こんばんは、美琴ちゃん」
気まずそうにクローゼットの中から降りてきて、明らかにひきつった笑みで挨拶してきたのは、私の頼れる姉貴分――早苗先生だった。
パンツスーツ姿の彼女は、ふう、とため息をつくと、壁にもたれて頭痛を堪えるように額に手を当てる藍澤先生に向かって言った。
「説明は、あなたに任せていい?」
「うーん……説明っていったって、話せることは限られてるしな」
「そうね……」
オトナな男女医師ふたりは、本人たちにだけわかるようにそんな会話をしただけで、黙り込んでしまう。
“言えることは限られてる”って何よ。つまり“言えないような何か”をしていたってことじゃないの?
こんな状況、今度こそ、蘭子さんの発言を信じざるを得ないじゃない……。
やっぱり“運命的政略結婚”なんて、所詮、私を喜ばせるためのエサに過ぎなかったんだ。
そこまで思い至ると、胸が痛いくらいにぎゅうっと締め付けられた。