運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~


「美琴ちゃんと俺が出会った時、彼女は俺が医者だとは知らなかった。それどころか、“放浪の画家”だなんていかにも収入なさそうな肩書きだったのに、結婚の約束をしてくれたんだ。今まで蘭子ちゃんみたいな計算高い女の子たちには嫌というほど出会ってきたけど、美琴ちゃんみたいな子は初めてだった。……それも、彼女に運命を感じた理由のひとつかな」


藍澤先生……ベネチアで初めて私たちが出会ったあの時、そんなことを思っていたんだ。

彼の使う“運命”というフレーズは、決して上辺だけのものじゃなかった。彼なりに、私のことをきちんと見つめてくれていたんだ。


「……その上」


工藤さんも蘭子さんも黙り込んで何も反論してこないけれど、藍澤先生はさらに続けた。


「顔もスタイルも声も、完全に俺好みでさ」


話しながらこちらを向いた彼が、私の頬にスッと手を添えた。

職業柄、フレグランスの類はなにも身に着けていないはずの彼から、なんだか妖しい香りが漂ってきたような…….もしや、これはまたアレの分泌が始まってるんじゃ……!


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