運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
自信がなさそうに苦笑した天河さんだけど、私はむしろキュンとしていた。
放浪の画家だなんて、狭い世界で権力争いをしている医者とは対極にいるような職業じゃない。私も、彼と一緒に自由な世界を見てみたいな……。
「絵を描けるなんて、素敵ですね。そうだ、この街も描くんですよね? 絵になりそうな場所、いっぱりありますし」
「……うん。まあね。っていうか、画家設定あまり掘り下げないで欲しいんだけど」
長い指で頬を掻きながら、ぼそぼそとよくわからないことを呟く天河さん。でも、仕事のことをあまり聞かれたくないという雰囲気はなんとなく伝わった。
「ごめんなさい、私ってば質問攻めにして……」
「いや、いいんだ。それより、食事が済んだらその大きな荷物は一度俺の部屋に置いて、観光に行かない?」
「はいっ、行きます」
嬉々として返事をすると、天河さんも満足げに微笑んでくれる。
よーし。腹ごしらえもできたし、これからがデート本番だ。
私は気合いを入れるように、カップに残っていたカプチーノを一気に飲み干す。そしてふうっと息をついてカップを置いた瞬間、なぜかテーブルの向こうから天河さんの骨ばった手がこちらに伸びていた。
「二人きりなら、舐めてあげたいところだけど……」