運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
甘い声でそう言ったかと思うと、彼は親指で優しく私の口元を拭った。どうやらカプチーノの泡が付いていたみたいだけど、いきなりの親密なスキンシップに、ドキッと心臓がジャンプする。
や、やばい……恋人同士って、こういうこと、普通にするの? よく考えたら、私まったく耐性ないんですけど……。しかも天河さん、“舐めてあげたい”とか言わなかった……?
一気に頬がかぁっと熱くなる私だけど、天河さんは余裕の笑みで自分の親指をペロッと舐めた。
一瞬のさりげない動作だったし、直接自分が舐められたわけでもないのに、私はなんだかぞくっとして、その後しばらく彼を直視できなかった。
カフェを出て向かった先は、天河さんが宿泊中だというホテル。荷物の詰まった私の大きなキャリーバッグを一旦置かせてもらうためだ。
放浪の画家、という彼の職業から、なんとなく質素なホテルを想像していた私だけど、目の前に現れたのは、まるで宮殿のような、クラシカルで格調高いホテルだった。
「……天河さん、ここにお泊りなんですか?」
エントランスに入り、頭上に煌めくシャンデリアを見上げた私は、想像とのあまりのギャップに目をぱちくりさせて尋ねる。