運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~


「……ばっかみたい。帰る!」


荒々しく吐き捨て、大股で私たちの脇をすり抜けていく彼女。その一瞬、彼女の横顔に涙がきらりと光った気がした。

もしかして、蘭子さんは本気で藍澤先生を好きだったんじゃ……。そんな思い付きから胸に小さな痛みが走り、彼女が部屋を出て行く姿をなんとなく目で追っていると、藍澤先生がポンと肩に手を置く。


「彼女の気持ちは、ちゃんとお断りしてあるよ。ほら、美琴ちゃんと箱根に行ったときに、電話があったでしょ? あれ、実は蘭子ちゃんでさ。なんとなく彼女の気持ちには気づいてたから、きちんと断るつもりで食事に行ったんだ。でもいざ交際を断ったら、“じゃあ愛人でもいい”なんて食い下がるもんだから、もっと自分を大切にした方がいいって助言したんだ。ま、うまく伝わらなかったみたいだけど」

「そうだったんですか……」


あの電話は、蘭子さんからのものだったんだ……。パーティーであんなにひどい言葉を次々投げかけてきたのは、藍澤先生に振られた腹いせもあったのかもしれない。

でも、悪いけど……藍澤先生のことだけは、私も譲れないよ。


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