運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
「悪魔と呼ばれるのに慣れ過ぎて、“素の俺”なんて自分でも忘れかけてたのに……美琴ちゃんと一緒にいると、心が洗われるような気がするよ」
「藍澤先生……」
「それに、きみと一緒にいて、気がついた。“サービス精神”だけで成り立つのは、本気の恋愛じゃないって。結婚なんて、もってのほかだ。安心して、自分の全てをさらけ出せる相手じゃなきゃ、一生を共にするなんてことできないよな」
恋愛経験の豊富であろう彼だけれど、その豊富な経験をむしろ後悔するかのように、自嘲気味に語る。
その気持ちに寄り添ってあげたくて、私は彼の頬に手を伸ばして包み込むようにそっと触れた。
「私には、全部見せてください」
彼の薄茶色の瞳をまっすぐに見つめ、言い聞かせるように言葉を紡ぐ。
「もっとあなたを知りたいんです。怒った姿、泣いてる姿、困ってる姿……どんな表情を見せられたって、大丈夫です。だって私たち、お互いに運命の相手ですから」
「美琴ちゃん……」
彼は深く感じ入ったように呟き、頬に触れている私の手の上に、自分の手を重ねた。
そしてぬくもりを確かめるように、長い睫毛を伏せて目を閉じる。