運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
「うん。ここの五階。気に入ったなら、きみも今夜泊まる?」
口調はサラッとしているけど、いわゆる“オトナのお誘い”だと察した私は、どぎまぎしてうつむく。
「え、遠慮します……」
いくら運命の相手とはいえ、出会ったその日に部屋に泊まるだなんて大胆なこと、恋愛初心者の私にできるわけがないよ。
「はは、照れちゃって可愛い。でも、夜までにきみをその気にさせる自信ならあるから、覚悟しておいて?」
「えっ……?」
聞き返した私に返事こそしないけど、天河さんは妖艶な流し目を残してひとりフロントに向かっていった。
そ、その気って……どうやってなるものなの? そもそも私、処女なんですけど……。
胸の内で頼りなく呟きながら、天河さんの姿を後ろから見つめる。どうやらイタリア語ができるらしい彼は、スムーズに会話を進めて従業員に私のキャリーバッグを預けていた。
すごいなぁ……。放浪しながら様々な国に行くから、外国語にも堪能なのかな。元々のコミュニケーションスキルも高そうだし、たくさんの人に好かれていそう。
それにしてもこんなホテルに泊まれるだなんて、彼の描く絵にはよっぽどの価値があるんだろうな。
天河さんのことを考えれば考えるほど彼を魅力的に感じて、私はひっそり胸をときめかせていた。