運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
わだかまりが解けたことにしみじみと感動を覚えつつ、彼女にエールを送る。
「体に気を付けて、頑張ってください」
「ええ、あなたもね。結婚しても、美琴ちゃんをあまりいじめちゃダメよ」
俺は腕組みをして、うーんと首を捻る。
「……それは約束できないような」
「なんて言って、本当はこれでもかってくらい可愛がるんでしょ?」
「あ、バレました?」
バレバレよ、とクールな笑みで言い残して、北条先生は病室を出て行った。
俺は何気なくさっきまで北条先生の立っていた窓辺に歩み寄り、そこから見える東京湾の穏やかな波を見つめた。沈んできた太陽を受けて光る水面がきらきらと眩しい。
無意識にその景色と重ね合わせるのは、遠いベネチアの美しい街並み。そして、初めて美琴ちゃんと出会った時の、大切な記憶。
明らかにアヤシイ初対面の俺が、ダメもとで放った“運命”というフレーズを、純粋に信じてくれた、穢れを知らない瞳。
この子はきっと、俺にとって特別な相手になる――。
そう予感したのは、決して間違いじゃなかった。