運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
「これで身軽になった。さ、行こう」
フロントから戻ってきた天河さんは、当然のように私の手を取って指を絡めながら握った。
不慣れな私はいちいちドキドキしてしまうけど、年上の男性にリードしてもらうのは安心感もあって、素直に嬉しかった。
天河さんに手を引かれてまずやってきたのは、サン・マルコ広場のシンボルである大鐘楼。赤レンガの外壁と緑の尖塔屋根が目を引く、百メートル近い塔だ。
広場自体には真帆とも来てぐるっと観光したけれど、そのときは大鐘楼が混雑していて見られなかったから、ちょうどよかった。
入口で料金を払って、エレベーターで見晴台まで上る。
「わ……」
扉が開いて、パッと視界が明るくなった瞬間、私は言葉を忘れて外に広がる景色に目を奪われた。
晴れ渡る青い空。少し緑がかった美しい色のラグーン。そこに浮かぶ街は幻想的で、おとぎ話の世界みたい。
ベネチアという街が水の都と呼ばれている意味が、改めてわかるような気がした。