運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~


それらが全部真っ赤な嘘なら反論の余地もあったけど、好意を寄せてくるナースは少なからずいたし、なかには当直室を訪ねてきて誘惑してくる肉食系のナースもいた。患者から電話番号を渡された経験も、一度や二度ではない。

だからといってその全員とセックスしただなんて事実はないけど、いちいち否定するのも面倒で沈黙を貫いていた。

そんなとき、俺に近づいてきたのが、中谷総合病院の院長の娘、蘭子ちゃんだった。

院長の娘であるというだけで、病院関係者でもないのによく病院に出入りしていた彼女は、俺を人気のない廊下の隅へ呼び出すとこう言った。


「藍澤先生、かなり敵が多いみたいだけど、私と結婚すれば次期院長は確定だし、何も言われなくなるんじゃないですか? 私も先生みたいなイケメン連れて歩きたいし、お互いにとってメリットしかないと思いませんか?」


すでに女性不信気味だった俺にトドメを刺すような発言には、思わず力ない笑いがこぼれる。ある意味自分に正直な女性なのかもしれないけど、結婚となるとそう簡単にウンとは言えない。

……俺だって、できることなら自分にとって唯一無二の存在を見つけて、愛し合って結婚したい。

今までの苦い経験から、最近は適当な恋愛ばかり繰り返してきたけど……その望みだけは、完全に捨てきれない。

妥協した相手と、今までのようにいいとこ取りの付き合い方で、結婚生活なんかうまくいくとも思えないし……。

俺はそんな思いから、丁重に彼女の申し出を断ることにした。


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