運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
「ごめんね、きみとは結婚できない。俺は出世を望んでいるわけでもないから、別に敵が多くたって構わないし、これからも自分のやるべきことをやるだけだよ。顔のいい奴を連れて歩きたいなら、他を当たって」
自分ではやんわり断ったつもりだったのだけど、どうやら蘭子ちゃんのプライドを傷つけてしまったらしい。
その直後から、今までの噂に加えて、彼女が流したのだろうと思われる内容が、さらにもうひとつ追加された。
“藍澤先生が出世のために院長の娘をたらし込んだが失敗し、それを知った院長を激怒させている”――なんて、根も葉もないゴシップが。
その後、誰が命名したのか知らないが、“白衣の悪魔”だなんて呼び名がついてしまい、俺の印象は悪くなる一方。
それでも仕事は仕事と割り切って素知らぬ顔をして過ごしていたが、半年ほどたっても一向に噂はおさまらず、とうとう俺は院長に呼び出された。
「今まで黙って様子を窺っていたんだが……そろそろお前自身居心地が悪くなってきたんじゃないか? 藍澤」
院長から直接痛いところを突かれ、図星だったために一瞬答えに戸惑った。でも、噂が流れる前と後で俺に対する態度を変えない院長のことは信頼していたので、彼を裏切ることはしたくない。
本音を隠して「大丈夫ですよ」と虚勢を張った俺だが、院長は申し訳なさそうに続ける。