運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~


「……ふうん。それで、辞めるのか」


ニュースキャスターのような、抑揚のない喋り方。それが時任の通常運転である。


「……かも、しれない」

「お前を必要としている患者は、まだ多くいるだろう」

「そうだけど……でもそれはこの病院に限ったことじゃないだろ?」


この高齢化社会だ。どこへ行こうと医師は不足しているし、患者は溢れている。俺は時任にも同意を求めたが、彼の反応は意外なものだった。


「俺は反対だぞ。今辞めたら、“悪魔”の噂に負けて、尻尾を巻いて逃げたと思われる。お前を煙たがってる奴らの思うツボだ」

「時任……」


……そんな怖い顔して、俺の味方してくれるんだ。わかりにくい男だけど、やっぱりお前はいい奴だよ。

彼の情がありがたいのと同時に、その反面今の病院をやめる方向へと心は傾いた。

どこへ行っても、時任のように俺のことをちゃんと見ていてくれる人はきっといる。それなら仕事のしやすい方へ移る方が、むしろ賢い選択かもしれない。


「ありがとな。そう言ってくれるのは、時任だけだ。……とりあえず、神鳥記念病院の院長に会ってみるよ」

「……そうか」


時任は俺を引き留められなかったことが無念そうだったが、それ以上は何も言わず、無表情なサイボーグに戻ると再びパソコンに向き直った。


< 153 / 166 >

この作品をシェア

pagetop