運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
「ベネチアで一番高い建物なだけあって、やっぱりホテルからの景色とは違うな」
「はい。……まさに絶景ですね」
そうだ。この景色を見ないで帰ってしまった真帆に、写真を送ってあげよう。
私はスマホを取り出し、色々なアングルから水に浮かぶ街を撮影する。
「写真……か。ねえ、俺たちも二人で撮ろうよ。出会った記念に」
「いいですね。ぜひ!」
天河さんのナイスな提案に、舞い上がって返事をした。
彼を疑っていたわけじゃないけれど、女性慣れしていそうな言動が多いことにちょっぴり不安だったのも事実。
でも、写真を残したいってことは、私たちの関係はこれっきりじゃないってことだもんね。
運命の出会いを果たした記念の一枚、ベストな自分で映らなければ。
妙な気合を入れながら、ストレートロングの髪を手ぐしで整える。すると突然、スマホを構えた天河さんにぐっと肩を抱き寄せられた。
ひああ、近い……! なんかいい匂いするし……!
動揺が顔に出ないよう、きゅっと口元を引き締める。
「いくよ?」
「はははいっ」
暴れまくる心臓をなだめながら、スマホのレンズ部分を見つめる。
シャッター音が聞こえて天河さんの手がふっと肩から離れると、彼に気付かれないように横を向いて呼吸を整えた。